インクルーシブな会議運営とアライの役割：人事担当者が推進すべきポイント
インクルーシブな会議運営の重要性
職場で多様な従業員が活躍するためには、日々の業務におけるインクルージョンの実践が不可欠です。その中でも、多くの従業員が参加する「会議」は、組織の意思決定や情報共有の中心となる場であり、インクルージョンが体現されているかどうかが、従業員の貢献意欲や心理的安全性に大きく影響します。
インクルーシブな会議とは、役職や属性に関わらず、全ての参加者が安心して意見を表明でき、議論に貢献できると感じられる環境で行われる会議です。このような会議は、多様な視点を取り入れることで、より質の高い意思決定や創造的なアイデア創出に繋がります。逆に、一部の参加者だけが発言し、他の意見が軽視される非インクルーシブな会議は、参加者のエンゲージメントを低下させ、組織全体の活性化を阻害する要因となり得ます。
インクルーシブな職場文化を推進する上で、アライシップは重要な役割を果たします。会議の場においても、アライが意識的に行動することで、その場をよりインクルーシブなものに変えることが可能です。
会議におけるアライの具体的な役割と行動
会議におけるアライは、特定の属性を持つ従業員だけでなく、全ての参加者が公平に扱われ、尊重されるよう働きかける存在です。会議の進行段階に応じて、アライが実践できる具体的な行動は多岐にわたります。
会議前のアライの役割:
- 目的・アジェンダの確認: 会議の目的と具体的なアジェンダが明確であることを確認します。不明瞭な場合は、主催者に確認を促し、参加者が事前に準備できるよう働きかけます。
- 参加者への配慮: 必要に応じて、会議資料の事前共有を促します。また、参加者の多様性（例: リモート参加者、聴覚・視覚に配慮が必要な参加者）を考慮した形式やツールが選ばれているかを確認します。
会議中のアライの役割:
- 発言機会の均等化: 特定の参加者ばかりが発言したり、他の参加者が発言しづらい雰囲気がある場合に、意識的に静かにしている参加者に「〇〇さんはこの件についてどう思われますか？」のように発言を促します。
- 意見への傾聴と肯定: 誰かの発言に対して、しっかりと耳を傾け、肯定的な態度を示します。「〇〇さんの意見は素晴らしいですね」のように、発言そのものを承認することで、他の参加者も安心して発言できるようになります。
- 発言を遮る行為への対応: 他の参加者の発言を遮る人がいる場合、「〇〇さんが話し終わってから意見交換しましょう」のように介入し、全ての意見が最後まで表明されるよう促します。
- 専門用語・略語の補足: 会議内で使われる専門用語や社内独自の略語について、全員が理解しているかを確認し、必要に応じて簡単な説明を加えるか、説明を促します。
- 議論の方向修正と意見の拾い上げ: 議論が脱線した場合や、特定の意見が軽視されがちな場合に、「少し視点を変えて、〇〇さんの意見も踏まえて考えてみましょう」のように、議論を軌道修正したり、埋もれそうな意見を拾い上げたりします。
- 非言語コミュニケーションへの配慮: オンライン会議においては、ミュート解除のタイミングやリアクション、チャット機能の活用など、非言語的なコミュニケーションやツールを活用した参加への配慮を促します。
- 結論とネクストアクションの明確化: 議論の最後に、決定事項や今後のアクションプラン、担当者、期日が明確になっているかを確認し、不明瞭な場合は確認を促します。
会議後のアライの役割:
- 議事録の確認と共有: 議事録が迅速に作成・共有されることを確認し、会議に参加できなかった人や後から内容を確認したい人が容易にアクセスできるよう配慮します。
- 意見を言えなかった人へのフォロー: 会議で意見を表明できなかった参加者がいる場合、個別に話を聞く機会を設けるなど、フォローアップを行います。
これらの行動は、特別な権限がなくても、全ての会議参加者が意識することで実践可能です。一人ひとりの小さなアライ行動が、会議の雰囲気を大きく変える力を持っています。
人事部門が推進すべきこと
人事部門は、組織全体のインクルーシブな会議運営を推進するための体制構築や意識啓発を担う重要な役割を果たします。
- インクルーシブな会議運営ガイドラインの策定と周知: 会議の目的設定、アジェンダ作成、進行方法、参加者の役割、オンライン会議でのマナーなど、インクルーシブな会議運営のための具体的なガイドラインを策定し、全従業員に周知します。
- マネージャー・リーダー層への研修: 会議のファシリテーションスキルに加え、インクルーシブリーダーシップの観点から、多様な意見を引き出し、公平な場を作るための研修を実施します。
- 全従業員向けアライシップ研修への組み込み: アライシップ研修において、会議の場での具体的なアライ行動（発言を促す、意見を遮らない、傾聴する等）をロールプレイングなどを通じて実践的に学ぶ機会を提供します。
- 会議ツールの効果的な活用促進: オンライン会議ツールに備わるチャット機能や投票機能、Q&A機能などが、発言が苦手な人も貢献しやすいツールであることを周知し、その活用方法を啓蒙します。
- 会議運営に関するフィードバック収集と改善: 定期的に従業員から会議運営に関するフィードバックを収集し、課題を特定してガイドラインや研修内容の改善に繋げます。
まとめ
インクルーシブな会議運営は、単に会議を効率化するだけでなく、従業員一人ひとりが尊重され、組織の一員としての貢献を実感できる職場文化の基盤を築く上で極めて重要です。アライシップは、この目標達成に向けた強力な推進力となります。全ての従業員が会議の場でアライとして行動することを奨励し、人事部門がそのための環境と機会を提供することで、より生産的で、よりインクルーシブな職場を実現していくことが期待されます。